脳性まひ(5才)尖足:治療フローとチェックリスト

結論:単独療法ではなく、保存(装具+PT)→ ボトックス併用 → 必要なら手術の順に、6〜12週ごとに評価し直して微調整するのが最短距離です。

意思決定フロー(現場運用用)

  1. 目的設定(例:6か月で「かかと接地で10m独歩」)
  2. 初期評価(2〜4週内)
    ・ROM(足関節背屈角・固定拘縮)/ 痙縮(Tardieu/MAS)/ 立位・歩容(GMFCS・転倒)/ 装具適合(AFO角度・当たり)/ 合併症(嚥下・呼吸・てんかん・鎮静リスク)
  3. 保存療法(8〜12週)
    ・毎日ストレッチ(背屈30–60秒×3–5回/日)
    ・AFO常用(学校・家庭)+ナイトスプリント検討
    ・週1–2回のPT(背屈筋強化・立位/重心移動・プレ歩行)
  4. 中間評価(8–12週)改善十分?
    ・はい:保存継続(3か月ごと再評価)/ いいえ:ボトックス適応検討
  5. ボトックス適応(固定変形なし/標的筋同定/鎮静安全/家庭で装具・ストレッチ継続可)
  6. ボトックス施行
    ・直後2–4週:シリアルキャスト or 装具で背屈位保持
    ・6–12週:集中PTで正しい歩容の学習(動画記録推奨)
    ・家庭:毎日ストレッチ+AFO常用
  7. 効果判定(6–12週)目標に近づいた?
    ・はい:4–6か月間隔で必要最小量を再投与+装具/PT継続
    ・いいえ:投与筋・用量見直し or ギプス併用/それでも不十分→ 手術評価
  8. 手術評価(整形・学童期目安)
    ・適応サイン:固定拘縮・骨変形/AFO不耐/痛み・転倒多い/保存+BoNTで未達/年齢6–8歳以降
  9. フォローアップ(半年ごと:ROM・歩容・目標到達度を総合再評価)

治療オプションの比較(要点)

治療法 メリット(利点) デメリット(課題)
ボトックス療法 痙縮軽減→可動域↑/歩容・バランス↑。装具・PTを「効きやすく」するブースト効果。変形進行の遅延・手術延期に寄与。 効果は一時的(概ね3–4か月)。反復注射(4–6か月間隔)と鎮静が負担。投与筋の一過性筋力低下、稀に嚥下・呼吸への影響。長期反復では筋発達への配慮が必要。
装具療法(AFO) 足関節を中立〜背屈位に保持し、かかと接地を促進。持続的ストレッチで短縮・拘縮を予防。BoNT後の効果維持に有効。 痙縮自体は低下しない。長期固定で筋力低下・皮膚トラブルの可能性。成長に合わせた再作製が必要。
理学療法(PT) ストレッチで柔軟性維持、背屈筋・体幹の強化、歩行・バランスの運動学習。BoNT併用で相乗効果。 即効性は乏しく継続が命。強い痙縮単独では限界。家庭での実施が不十分だと効果減。
ギプス固定 背屈位での持続伸張により短縮筋を伸ばす。BoNT直後の可動域改善を後押し。 入浴・活動制限、皮膚トラブル。効果は一時的で、維持には装具・PTが必要。通院負荷。
手術(アキレス腱延長 等) 尖足変形を根本是正。装具依存度↓、歩行安定・痛み軽減。適切時期なら機能改善が大きい。 侵襲あり(麻酔・感染等)。術後筋力低下や過矯正リスク、再拘縮可能性。長期リハ・フォロー必須。

家庭と外来のチェックリスト(印刷OK)

項目 具体内容 実施者 頻度/期日 確認
目標設定 6か月目標(例:かかと接地で10m独歩)を紙に明記して共有 家族+主治医 初回外来
毎日ストレッチ 膝伸展位で足関節背屈30–60秒×3–5回/日(痛みは避ける) 家族 毎日
AFO装着 学校・家庭で常用。赤み・当たりを毎日チェック。必要に応じナイトスプリント 家族 毎日
週次PT 背屈筋強化、立位・重心移動、プレ歩行。注射後6–12週は集中PT PT 週1–2回(集中的期は週2–3)
8–12週再評価 ROM/痙縮/歩容/装具当たりを再評価、方針更新 医療チーム 開始後8–12週
BoNT適応説明 目的・効果持続(概ね3–4か月)・副作用・鎮静の説明、家庭での実施体制確認 医師 適応時
BoNT後保持 2–4週:シリアルキャスト or 装具で背屈位保持 PT/装具士 注射直後〜
学校連携 装具・休憩・体位変換などの配慮事項を共有 家族 学期ごと
手術カンファ 固定拘縮/痛み/転倒/未達なら整形評価へ チーム 必要時

ボトックスに関するよくある誤解と実務ポイント

家庭ルーティン(平日15〜20分)

受診の目安(白旗を上げよう)

※本ページは医療的助言ではなく、主治医・PT・装具士との話し合いのための実務テンプレートです。個別の医療判断は必ず担当医にご相談ください。